撮影紀行 1月 (しおくずばんば…海霧)


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「しおくずばんば」とは一般的に「海霧」のことで、沼津市の内浦湾でも厳冬期に発生する。
地元漁民の間では「しおくずばんば」と呼ぶ。
「しおくず」とは「口野」の辺りを古くから呼んだ地名で、「ばんば」が海霧のことを言うそうだ。
シベリアからの寒気団によって冷やされた外気に、温かい海水が触れて水蒸気になる現象だ。
海水の温度が比較的高い奥駿河湾で見られるものだが、太陽が昇り外気温が上がると消滅するつかの間の現象だ。
ちなみにこの現象(海霧)を北海道では「ケアラシ」と呼ぶ。


朝未だ明けやらぬ頃、「しおくず」がたちこめている。
雲上世界が既に始まっているのだ。

サギやカモだろうか、鳥たちも羽を休める。
霧の中では外敵からも身を守れるのだろう。
やがて対岸から朝日が昇り、
「しおくずばんば」が輝き始める。
最も興奮する一瞬かもしれない。
対岸の家並みは「口野」の民宿街。


光る「しおくず」の中で羽を休める鳥たち。
雲上世界の最も輝く瞬間だ。

霧の中の養殖いけすで餌をやる漁師。
太陽が昇り始め「しおくず」は消えようとしている。


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